幸福なラザロ
金子由里奈
幸福なラザロ
金子由里奈
思い出し続けたい映画がある。
アリーチェ・ロルバケル監督の
『幸福なラザロ』
映画のこと、
映画を見ていた
私の心の天気?、
揺れ、風速、色
みたいなものを
ほんとはぜんぶを
新鮮なまま保存していたい。
あの時間に付箋を貼って、
いつだって
戻れるようにしていたい。
のに無理なので
過去のわたしは歌を作った。
優しくて、弱くて、純粋で、
きれいなものの居場所が
この社会にはないのはなんで。
そういうものが
無知と馬鹿にされて、
淘汰されてしまうのはなんで。
ラザロの居場所が
ない社会なんて
汚くて最悪。
弱い人が弱いままで
居続けられる、
でもそれがいまは無理だから
歌とか作っちゃう。
ゆっくりでも持続して
システムを壊し続け、
そういう生存圏を広げていきたい。
「幸福なラザロ」
金子由里奈
息にはぜんぶ誤解がある 君の庭を見るために 用意された窓はひとつ 見えるものしか見えないね
死んだら死んだで誤解は
見えないまま大きくなって
怪獣になって暴れだすのが
見てられない
わかってあげるよ
ただただ弱くて
わかってあげるよ
ただただ優しい人
形になりかけた誤解を 溶くために生きることをやめない みんな同じように笑うのに変だよな
わかってあげるよ
ただただ悲しくて
わかってあげるしかないよ
ただただ遠い人
わかってあげるよ
ただただ弱くて
わかってあげるよ
ただただ優しい人